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      "maegakinado": "はじめての死生心理学　終章\n　心理学は本来，人が生まれ，生き，死に逝くすべての過程においてさまざまな角度から光を当てる学問である。現在では，心理学の分野は基礎から応用に至るまで幅広く細分化され，人という存在の不思議に迫ろうとしている。その中でも「死生心理学」は，人の存在について，誰もが避けることのできない「死」から考えてきた。人の人生をたどってみれば，この世に生を受け，さまざまな人とかかわり，次世代へと有形・無形なものを継承しつつ，死を迎える。生から死へという順序であるが，死の側から生を見るという側面の強さが，「生」と「死」を逆転させた「死生学」あるいは，「死生心理学」という言葉に表れているように思われる。\n\n　本書では，これまでに行われてきた，死にまつわる心理学研究について概観してきた。本書を読み終わった読者の皆さんはどのような感想をもたれたであろうか。学問の視点からこの本を読んだ人は，諸々の研究結果が実践の場でどのように活用されるのか，あるいは他の学問領域とどのように関連しているのかということに，さらなる興味や疑問をもたれたかもしれない。また，実践の場で常に人の死生と対峙している人や，自身の体験と照らし合わせて読んだ人は，その体験を理論や学問的知見と重ね合わせたかもしれない。そして，自分の体験はそういうことだったのかと理解するヒントを得られた人もいれば，あるいはその反対に，体験と理論の間に差を感じたりしたかもしれない。\n\n　死生にまつわる問題を考える際，万人が納得いく答えを出すことは難しい。しかし死生心理学というこの学問分野は歴史こそまだ浅いが，それでも人間は有史以来，「死とは何か」，「生きるとは何か」という問いに対する答えを絶えず探求してきたのも事実である。それゆえ，こうした問いに対して，私たちはいくつかの共通点や一定の理解を分かち合うことができる了解可能性に開かれてもいる。それでは今後，どのような視点から「死生の問題」について考えれば，私たちは死生の問題に対する何らかの了解を得ることができるのだろうか。そのためのひとつの方策は，「死生を問う」ことの重要性を私たちが共に認識することだろう。そしてそれは身近な他者との対話のみならず，本書に描かれた先人や先行研究との対話を通じて可能になるのではないかと思う。\n\n　ところで先に，この本をどのような視点から手にとるかによって，読後の感じ方が違うであろうことを述べたが，読者の方々と著者たちの間を埋めるのはおそらく「関係性」という言葉であろう。以下，この「関係性」という言葉をもとに，今後の課題について記していきたい。\n\n　序章で述べたように，「死生心理学」では，死への態度，死に逝く過程，死別による悲嘆を中心に研究が進められてきた。なかでも死に逝く過程は，臨床現場のニーズや人々の関心の高さも手伝い数多くの研究が蓄積されてきている。とはいえ，生涯発達の視点からは中年期や老年期の研究に比べ，幼児期や青年期，成人期に関しては十分な研究がなされているとはいえない。なかでも，発達の視点からも捉えにくいとされる青年期から成人前期のいわゆるAYA（Adolescent and Young Adult）世代は，他の年代と比べ，内面を語りにくいこともあり，そのケアが困難である。この分野においては，今後，研究が手薄な年代への研究蓄積が望まれる。\n\n　また，本書の第1部第1章「死への態度」に代表されるような認知の面から死を捉えた研究については，おおよそすべての年代が網羅されているが，個を中心とした質問紙構成となっており，関係性から捉えるという視点が欠けている。このことが，第8章でも論じたとおり，成人期の研究が手薄になっている一因であると考えられる。本書第2部では，ライフステージ別に各発達段階特有のライフイベントや認知面での発達をベースに研究を概観した。そこからもわかるように，発達は個のものとして捉えられがちではあるが，そこには家族をはじめとしたさまざまな人々との関係がある。生きること，死に逝くことは単に個に閉じたものではなく，関係性の上に成り立つものである。さらにそれは家族などの身近な他者との関係性にのみあてはまるものでもない。所属集団や地域社会との関係性，信仰や戦争体験といった文化歴史的文脈との関係性もまた，人の死生について大きな影響を与えるのである。こうした観点は，今後の死生心理学研究においてますます重要になってくるだろう。 　さらには，これまでの死生心理学における各領域の関係性も重要である。たとえば死に逝く過程における，患者や家族，医療従事者の死に対する恐怖や予期悲嘆の問題に迫るためには，死に逝く過程，死への態度，死別といった諸領域の観点が必要になるだろう。また自殺の問題はどの領域とも密接にかかわる大きな課題である。たとえばエンド・オブ・ライフにおける積極的安楽死や医師による自殺幇助の問題や，複雑性悲嘆と自殺のリスクの問題など，これまで以上に死生学と自殺予防学との連携を深めていく必要がある。また，急速に発展を遂げている生殖医療においては，この世に生を受ける前の受胎あるいは受胎に至るまでの死生の問題や死生の選択についても，生命倫理学や遺伝学の視点を取り入れた研究も今度ますます重要になるであろう。\n\n　本書では，学術研究を中心に紹介してきたため，臨床・実践現場における具体的な支援方策については十分扱うことはできなかった。今後は理論と実践を架橋する現場研究の蓄積がさらに求められるようになるだろう。そしてそれは，研究と実践が連携している「死に逝く過程」や「死別」，「自殺予防」といった，差し迫った死と対峙する人々にかかわる分野にとどまらない。たとえばエンド・オブ・ライフケアの発展を念頭に，人がその生涯を通じて経験する複数の死別体験をどのように自らの人生に組み込みながら生きるのかという問題や，がんサバイバーがその後の人生においてどのように死を意識し，向き合いながら生きていくのかといった問題について検討していくことが今後さらに必要になってくるだろう。その際には，これまでの主たるフィールドであった医療現場から，人々の日常生活に根差した現場へとそのフィールドを拡張させていくことも欠かせない。そしてそれは死から生を見ることと同時に生から死をみること，もっといえば生死心理学の構築へとつながるものだろう。\n\n　編者二人が，晩秋の本郷で，いつか人の死生を正面から捉えた心理学の本を出したいと計画を始めて4年がたち，多くの人々に助けられ，巨人の肩の上に立ち，本書を発刊することができた。なお本書に収蔵された各章はいずれも力作揃いであり，大変読み応えのある内容であるが，最終的な編集責任は編者が負うものである。本書についての忌憚のないご意見やご批判を，読者諸兄姉からいただきたい。また末筆になるが，本書の出版においては，新曜社の塩浦?さんにご尽力いただいた。ここに感謝申し上げたい。加えて本書を刊行するにあたり， JSPS科研費16K13477およびJSPS科研費15K04579からの助成を受けた。\n\n　死生の問題は，いつ，どこから，どのように見るのかによって，たとえるなら光の当て方によって，浮かび上がる像が異なる。本書が，さまざまな「死生」像を照らし出すひとつの灯りになれば，この上ない喜びである。",
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