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      "maegakinado": "　私は、作曲家として、尺八演奏家として、四〇カ国以上で、各国の音楽に関わり、多くの演奏家と共演してきました。そういった経験を重ねるごとに感じるのは、日本の音楽の素晴らしさと、特殊性です。日本の音楽は、人類が創り出した、まさに全人類の宝です。日本の音楽がなくなってしまうと、全人類からこのような表現形式は、未来永劫失われてしまう運命にあります。この本は、その日本音楽がどのような構造を持っているのかということについて述べています。今までとはまったく異なった方向から分析、解説した本です。\n　今まで、日本の音楽は、「分析不能」「分析するに値しない」などと言われたこともありました。しかし、フランスの人類学者レヴィ゠ストロースは、呪術や非合理的なものを未開、文明の構図に当てはめてはいけない、むしろそういったものの方が優れている部分が多々あるとも言っています。構造主義的、「野生の思考」的なものの見方です。事実、現代では、分析しにくいものの中に、複雑な科学性が含まれていることがわかってきました。\n　これまでの問題は、西洋音楽の「文法」で日本音楽が解析され、未開の音楽であるかのように片づけられてきたということです。たとえば、音の垂直的な重なりについて考えるときに、ハーモニーのみ考えて、倍音についてはまったく言及されてきませんでした。その結果、日本の音楽は「ハーモニーがない劣った音楽」と片づけられてきた傾向があります。\n　しかし、言語の場合でも、英語を分析するには英文法で、日本語を分析するには日本語の文法をもってあたらなければなりません。日本音楽を分析するには、日本音楽にふさわしい分析法をとることが必要です。本書では、今までとは異なった分析法、つまり「倍音」「リズムの枠組み」「根源的要素の使用」「間」などを基に分析していきます。\n　こういった分析の方法は、ロバート・コーガンの方法の延長上にあるものと言えるでしょう（Robert Cogan, Pozzi Escot “Sonic Design: the nature of sound and nusic” Prentice Hall, 1976）。\n　そういった定性的な分析を集積して、日本音楽の深層を現そうとしています。　\n　さらに、日本の音楽が世界の中でどのように位置づけられるのか、どのような価値をもつのかということを考え、過去・現在の日本音楽、伝統的なものだけでなく現代のＪ─ＰＯＰまでを視野に入れ、その構造を科学的に解き明かしていきます。\n　そして、もう一つ外の枠、物理学、音響学、文化人類学、社会学などの視点も含めて、日本音楽という立体像を浮かび上がらせようとしています。\n　そういった意味では、多方面から科学的に日本音楽を解説した初めての本と言えるでしょう。\n\n　ここに本書の概要を記します。\n　図１「日本音楽の構造」（次頁）を見てください。日本音楽が現在の形をとるようになった流れを整理したものです。図１の上半分から見ていきます。\n　まず第一に、日本の人々は、さまざまな環境的要素からａ微小音量の聞き取り能力が上がった。そこからさらに倍音、ｃ整数次倍音の変化に敏感になった。\n　第二にそこから母音主体の言語が生まれた。それによって強調するときにはｄ非整数次倍音を使うようになった。そのために音楽において複雑な音響を使うようになった。　\n　第三に音楽・言語・音響の構造が同じになった。それにより境界を越えて言語、音響を取り込んだ複雑な音楽が成立した。\n　第四に複雑な音響を扱うことにより、無意識下のコミュニケーションの割合が大きくなった。\n　第五に真実性、社会同一性、集合的無意識など、人間の本質的な部分と深く関わる音楽になった。\n　第六に人類の始原、本質を、演じ、聴く音楽となった。言い換えれば古代の脳を受け継いだ。\n　ここからは下半分に移ります。\n　第七にさまざまな環境的要素から、倍音に敏感になり、さらにｅリズムの自由性を獲得した。\n　第八に根源的要素を使うようになった。\n　第九に各要素の複合性が進んだ。\n　第十にそこから「間」の感覚が生まれた。\n　第十一に根源的要素を使用することにより他のフィールドとの融合が進んだ。これは他の音楽、他のジャンル、他のメディア、果ては脳、宇宙に至るすべてとの融合を意味する。\n　第十二に未来の音楽を指し示していること。\n　第十三に日本の音楽は、人類の遙かなる過去を呼び戻して、未来を指し示す、時空を越える音楽と考えられること。\n　この太字の部分は、日本音楽において特に重要なものと考えています。日本音楽のこれらの特質がなぜ生じたのかを解明していきます。\n\n　誤解しないでいただきたいことがあります。ここでは、日本音楽と他の世界の音楽の優劣を論じようとしているのではないということです。\n　今まで日本音楽の良さはあまり語られてきませんでした。そこで、この本では、語られてこなかった日本音楽の素晴らしさについて述べています。西洋音楽、および他の世界の音楽、その素晴らしさについては特別述べていません。だからといって西洋音楽、および他の世界の音楽が劣っているということではありません。\n　むしろ、私は西洋音楽、および他の世界の音楽を学んだ者として、それらの魅力を身にしみて知っているつもりです。またそれらの音楽が大好きです。\n　ただこの本の目的は、まったくと言ってよいほど知られてこなかった日本の音楽について知ってもらいたいということです。日本の音楽の魅力が語られることは非常に少なかったので、この本では詳述しています。日本音楽の魅力、特殊性を理解してもらえれば嬉しく思います。\n　また、音楽の根源的要素として、「倍音」、「自由リズム」などを日本音楽の特徴としてあげていますが、これらが多ければ多いほど良い音楽というわけではありません。これらが少なくても、繊細で日本的な素晴らしい音楽は多々あります。また世界にも、「倍音」、「自由リズム」が少ない、素晴らしい音楽は多々あります。\n\n　この本は、全三章と付論からなっています。第一章がこの本の核で、本書の二つのキーワードと言える「倍音」と「密息」を基に論が展開されます。「倍音」「密息」について馴染みのない方は、かならず付論Ａ、Ｂを先に読んでください。ここでは簡単に説明しておきます。\n　「倍音」とは、基音とともに音を構成するもので、基音と共鳴する整数次倍音と、不規則的に発生する非整数次倍音から成り立っています。日本語では、思いや意味を強調するときにこの非整数次倍音を使います。ここが日本語と西洋の言語との大きな違いであり、これが音楽の決定的な違いを生み出します。\n　「密息」とは、日本の伝統的な呼吸法のことです。吸うときも吐くときも、腹を膨らませたまま行います。非常に短い時間での大量の吸気、身体の安定性、不動性などの特徴があります。さらにそれらにより、聴覚、視覚、触覚などが敏感となり、小さな音を識別して、繊細な細工などができるようになりました。ここから日本の文化の特殊性の多くが生まれたと考えられます。\n　また、日本の「音階」、「リズム」について詳しくない方も付論Ｃ、Ｄを先に読んでください。\n　日本の音楽を知るということは、異なった価値観、システムを知ること、またもう一つの世界、アナザーワールドに足を踏み入れることでもあります。私の経験からすれば、日本の音楽は未踏の秘境に例えられます。聞こえない音を聴くという行為でもあります。その特殊性から思いも寄らない宇宙、世界が現出します。\n　それでは、一緒に「日本の音楽」の宇宙を巡る壮大な旅に出かけましょう。皆さんの脳、身体に眠る他者、「日本の音楽」との遭遇の旅です。",
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